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| 超初心者のための臨床腎臓病学 |
1.腎臓病学へのイントロダクション
2.観察と病歴聴取のポイント
3.腎不全 ほわっと?
4.腎不全の保存療法
5.What's血液透析 6.血液透析の短期合併症 7.長期透析合併症〜1 8.長期透析合併症〜2 |
| Post Graduate Nephrology No.2 今回の内容 |
| 腎疾患にはこれと言った症状がないことが多く、だから検査してみなければわかららな いのが普通であると、前回のべた。しかし、だからと言って、腎疾患患者は病状の聴取や観察が重要でないのかというと、それは違う。むしろ逆であって、乏しい症状・所見を、いかにして見逃さずにキャッチするかについて、知識や技術が必要となることを意味する。 それでは、患者が入院してきた時や、ベッドサイドを訪れた時、何を聴取し、何を観察しなければならないのであろうか? それをこれから説明する。 |
| 浮腫 |
浮腫(edema)(1) は、腎疾患でしばしばみられる身体所見である。ところで、浮腫とは、いったいどうなることだろうか? それを理解するには、われわれの体液がどのように分類されてい るのかについて、少し知っておく必要がある(図1参照)。
図1 体液の分類
体液は、細胞のなかにある『細胞内液』と、細胞の外にある『細胞外液』におおきく分類される。(2) さらに、細胞外液は血管のなかにあるものと、外にあるものの、2種類がある。血管の中にあるのは、当然『血液』だが、血管の外にあるのは、『間質液』という名前がついている。浮腫は、この、『間質液』が異常に増加した状態である。
部分的に『間質液』が増えた状態、つまり局所性の浮腫の例としては、虫刺されのあとや、頭のたんこぶなどがある。また、下肢などの太い静脈が詰った場合(深部静脈血栓症)や片麻痺の麻痺側にも、その足だけに限って浮腫がおきることがある。
しかし、腎疾患でみられる浮腫は、このような局所性のものではなく、全身性の浮腫である。
この場合浮腫は、朝は顔面、とくに上・下眼臉周囲によくみられ、夕方には下肢、とくに脛骨の前面(いわゆる『弁慶のなきどころ』)や、足背に認めやすい。(3) 浮腫があると、その場所の皮下に過剰な体液がたまっているので、指で押すと、その体液(間質液)がおしのけられて、皮膚が引っ込み、その圧痕は指を離してもしばらく残っている。 さらに症状がすすめば、皮下だけでなく、胸水・腹水、また陰嚢水腫などを合併してくる。
腎疾患で浮腫を認めるのは、第一にネフローゼ症侯群の場合で、そうでなければ急性糸球体腎炎をはじめ各種の疾患により、腎機能が相当低下した場合である。これらの場合はっきりとした浮腫が出現する時、おおくは 4〜5s 以上の体重増加を伴っている。つまり腎疾患において、浮腫は病態が進行したときに現れる、重要な兆候である。
ただし浮腫があるからといって腎疾患があるとは限らない。例えば心不全・ある種の内分泌疾患・肝硬変・ある種の薬剤(4) の影響などで浮腫を生じることがあるし、一日立って働き続ければ健常人でも下
肢に軽度の浮腫がでることも珍しくはない。
言い換えれば、朝から浮腫があれば必ず病的といえる。
| 尿量と体重の変化 |
一日の尿量は、発汗や飲水の量などに左右されるが、通常は500〜2000ml である。一日の尿量が 400ml 以下の場合を乏尿と呼ぶが、これは正常な腎臓でも尿量がおよそ 500ml なければ、その日に生じた代謝産物を十分排泄できず、これらが体内に蓄積するからである。(5) また一日尿量が 100ml以下の場合、定義上無尿と言う。逆に一日尿量が 2500〜3000ml を超える場合を多尿と言う。
乏尿・無尿は急性腎不全や末期の慢性腎不全、または脱水などでおこる。多尿は、浮腫が軽快する経過や、急性腎不全の回復期、慢性腎不全の経過中も生じるほか、糖尿病・尿崩症などの疾患でみられる。
体重の変化も腎疾患ではしばしば重要である。例えば健常者が1リットル余計に水分を摂取しても、尿量が1リットル増えるだけだが、腎不全やネフローゼの患者の場合は、その分がからだにたまって体重が1キロ増えてしまうかもしれない。このように腎疾患では、体重は尿量と強く関連することがある。
いま数日の経過で、体重が何キロか変化し、尿量も変動したとすると、次のように考えられる。
[体重減少]+[尿量減少]→[脱水] [体重増加]+[尿量減少]→[心不全や浮腫の出現または悪化] [体重減少]+[尿量増加]→[心不全や浮腫の改善] [体重増加]+[尿量増加]→[脱水の改善]このように体重の経過は、特に重症の腎疾患において、不可欠の情報である。(6)
| 排尿回数 |
排尿の回数は、通常一日数回である。当然ながら排尿回数は、尿量と膀胱の容量の、両方に関連する。参考までに、膀胱に150〜200ml 尿がたまれば尿意を感じ、450ml 前後で尿意が我慢できなくなる。しかし膀胱内の尿が余り多くないのに尿意を感じ、一回尿量が少ないのに頻繁に排尿する場合がある。このように、多尿でないにもかかわらず排尿回数が多い場合を頻尿という。頻尿は膀胱刺激症状の代表的なもので、膀胱炎などでみられる。
また腎機能が正常であれば、夜間は腎臓が尿を濃縮し、昼間に較べて尿量は少ない。一方腎機能、特に尿の濃縮力の低下(7) に伴って夜間の尿量が増加し、就寝から起床までの間に1回ないし数回、排尿に立つようになる。このような夜間尿は、年齢が 60歳台であればむしろ当然である。しかしもっと若年で認められれば、腎機能低下の初発症状を疑う必要がある。
| 高血圧 |
高血圧は、一般的に見て頻度の高い疾患であり、多種の降圧薬が高血圧の治療のために発売されている。ところで、高血圧はなぜ治療されなければならないのだろうか?
周知のことと思うが、高血圧が続けば、動脈硬化を促進し、脳血管障害や心疾患、腎疾患などの危険が増える。だから高血圧の治療の目的は、将来こういった疾患に陥る危険を減らすことにある。未来の病気を予防するために、今の血圧をコントロールする必要があるわけである。
それでは、そのためには血圧はどのくらいの高さにコントロールする必要があるのだろうか?
疫学的な調査が重ねられた結果、臓器障害を予防するために望ましい血圧のレベル、つまり血圧の管理目標がしだいに厳しくなってきており、最近では表1に示すように、140/90 以上は治療の対象と考えられるようになっている。
| 分類 | 収縮期血圧(mmHg) | 拡張期血圧(mmHg) | |
| 正常血圧 | 130 未満 | 85 未満 | |
| 高値正常血圧 | 130〜139 | 85〜 89 | |
| 高血圧 | |||
| 第1期(軽症) | 140〜159 | 90〜 99 | |
| 第2期(中等症) | 160〜179 | 100〜109 | |
| 第3期(重症) | 180〜209 | 110〜119 | |
| 第4期(極めて重症) | 210 以上 | 120 以上 | |
腎疾患と高血圧は密接な関係がある。
まず腎疾患が高血圧の原因となることがある。このような高血圧を『腎性高血圧』と言い、二次性高血圧(9) のなかでは内分泌異常と並んで代表的な存在である。
逆に高血圧は、腎疾患の原因となることがある。動脈硬化による腎障害は腎硬化症というが、特に重篤な場合は、悪性高血圧と呼び、頭痛・体重減少・消化器症状などを伴い、週ないし月単位で進行性に腎機能が悪化し、末期腎不全に致る病態であり、典型的には拡張期 130mmHg 以上の高血圧を伴う。(10)
さらに高血圧は、慢性糸球体腎炎などの患者に、腎機能の悪化をもたらす要因にもなる。
したがって高血圧を合併する腎疾患では、適切な降圧療法(食塩制限などの食事療法も含まれる)が大切であり、実際降圧に成功すると、尿蛋白が減少したり、腎機能の低下にブレーキが掛かるなどの効果が経験される。しかし急激な降圧はかえって腎機能を低下させることがあり、注意が必要である。
| 腎疾患のその他の症侯 |
図4 尿管疝痛の分布
なお、腎生検後に腎周囲に血腫を生じたときは、血腫は腎下極部から腸腰筋に沿って外側下方に分布し、同部に圧痛や自発痛を認める。 膀胱炎や尿閉では、恥骨上部に圧痛・自発痛を生じる。 このように、疼痛を伴う腎疾患は、感染症や泌尿器科的疾患が主体であり、ほとんどの内科的腎疾患は、痛みを全く伴わないまま、継続または進行する。
| 患者評価に必要な情報 |
患者の状態を把握するために、以下の各項目についての情報が必要である。(12) 患者の観察や患者・家族との面接の他に、医師の診療録や過去の病歴などもぜひ利用したい。
| アナムネ聴取のポイント |
| まとめ |
これまで何度も強調したように、腎疾患の多くは、進行するまで自覚症状に乏しく、発見・診断には、検査のちからを借りる必要がある。しかし冒頭で述べたように、このことは腎疾患では自覚症状や他覚所見の意義が少ないことを意味するのではない。むしろ逆であって、症状をみつけて、評価するために、症状とその意義に対する精確な知識を必要とするのである。
今回は、腎疾患患者の観察や、状態の評価・看護計画の立案に必要となる諸事項について、解説した。
患者の観察や、病歴の聴取は、よい診療のためには極めて重要であることは、説明するまでも無いことである。そしてこれらの知識・技術は、医師だけでなく、患者と関わるすべての医療職に必要なことである。
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2.観察と病歴聴取のポイント
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