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| セクション5
ダイアライザー |
| はじめに |
透析の初期、慢性腎不全患者の尿毒素(uremic toxin)は、尿素やクレアチニンなど分子量100前後の小分子量物質が本体と考えられており、ダイアライザーも分子量3,000以下の物質しか除去できなかった。
しかし、1971年にBabbやScribnerらの中分子量物質の仮説により、毒性の高い尿毒素が分子量500〜5,000の領域にも存在すると考えられるようになり、これらの物質除去を目的としたダイアライザーが開発され、慢性透析患者の長期延命が可能となった。
その後、長期透析患者に手根幹症候群などの透析アミロイド症の合併症が発現するようになった。
この原因が、それまでの透析治療では除去いえなかった分子量11,800の小分子量蛋白質の1つであるβ2-MGであることが1985年に下条らにより明かにされ、β2-MGが除去できるダイアライザーの開発が強力に推し進められ現在に至っている。
さらに最近では、アルブミン(分子量68,000)近傍あるいはこれより大きい分子量領域に造血阻害因子、免疫抑制因子、疼痛関連因子などの存在が推定され、透析合併症のさらなる改善に向け蛋白漏出ダイアライザーの使用が試みられている。
このように、透析治療はダイアライザーの透析性能の改善によって向上してきたと言っても過言ではなく、ダイアライザーの選択は透析治療の質を決定する要となる。
ここでは、このダイアライザーの基本的な事項について概説する。
| ダイアライザー |
ダイアライザーは、透析膜を介して血液と透析液を接触させ、溶質の濃度差による拡散と、静力学的な圧力差による限外濾過によって、溶質の除去、補給及び水分の除去を行い血液を浄化する。
| 種類 |
これまでに、コイル型、積層型、ホロファイバー型(中空糸型)の3種のタイプが使用されてきたが、現在では小型高性能で血液充填量が少なく、操作性、安全性にも優れたホロファイバー型が主流となっている。
ホロファイバー型は、中空糸状の透析膜(内径175〜280μ、膜厚7〜50μ)を数千〜1万数千本束ね、円筒形(長さ15〜30cm、内径2〜5cm)のプラスチック容器に充填し、中空糸の中に血液を、外側に透析液を対方向に流す構造になっている。
| 透析膜 |
現在使用されている透析膜は、天然高分子のセルロース系膜と合成高分子系膜の2つに大別される。
これまで、透析膜として機械的強度が高く、適度な透水性を維持し低分子量物質の除去性能に優れたセルロース系膜の再生セルロース膜が広く使用されてきた。しかし、最近では、β2-MGなどの低分子量蛋白物質の除去を目的とした膜の孔径コントロールや生体適合性の面で優れている合成高分子膜が普及している。(表−1)
| セルロース系膜 | |
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| 合成高分子系膜 | |
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| 透析膜面積 |
透析膜面積は、0.2〜2.3uのものがある。小児では0.2〜0.5uが、高齢者や糖尿病症例では0.5〜1.3uが使用される。
一般に、ダイアライザーの溶質クリアランスおよび限外濾過量などの透析性能は透析膜面積の増加に伴い増大する。しかし、膜質によって同じ膜面積でも透析性能が異なるので、膜面積それ自体の比較は臨床上ではあまり重要ではない。
なお、大面積ダイアライザーは、生体適合性に優れた、セルローストリアセテート膜や、ポリスルホン膜のものを選択するのが望ましい。
| 血液充填量 |
血液充填量は、35〜160mlで、膜面積および中空糸内径によって異なる。血液回路の充填量は55〜150mlで、体外循環血液量全体では、90〜310mlとなる。
中空糸内径200μのダイアライザーの単位面積当たりの血液充填量は、1.0u当たり約60 mlである。したがって、透析面積1.5uのダイアライザーの充填量は、60ml/1.0u×1.5=90mlと概算できる。
小児や高齢者及び糖尿病症例および大面積ダイアライザーを使用する場合には、充填量の少ない血液回路と組合せ体外循環血液量を極力少なくするのが望ましい。
| 滅菌方法 |
滅菌方法には、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、高圧蒸気(オートクレイブ)滅菌、放射線(ガンマー線)滅菌がある。
エチレンオキサイドガス滅菌では、稀にガスに対するアレルギーを示す患者で、透析中にアナフィラキシー反応を来すことがある。したがって、現在では高圧蒸気滅菌やガンマー線滅菌が一般的になっている。
| ダイアライザーの透析性能 |
ダイアライザーの透析性能は、クリアランス、ふるい係数、除去率、Kt/Vおよび限外濾過率などで表わされる。
CL= (CBi×QBi−CBo×QBo)/CBi
CL :クリアランス(ml/min)
CBi:ダイアライザー入口血液溶質濃度
CBo:ダイアライザー出口血液溶質濃度
QBi:ダイアライザー入口血液流量(ml/min)
QBo:ダイアライザー出口血液流量(ml/min)
SC=CF/(CBi+CBo)/2
CBi:ダイアライザー入口血液溶質濃度
CBo:ダイアライザー出口血液溶質濃度
CF :限外濾過液の溶質濃度
除去率= (CB−CA)/CB×100
CB:透析前の溶質の血液中濃度
CA:透析後の溶質の血液中濃度
| 透析性能改善の工夫 |
ホローファイバー型ダイアライザーは、透析液が数千〜1万数千本の中空糸の束の外周部より流入し、外周部から流出する構造のため、束の中心部へ透析液が十分に潅流しない偏流(チャネリング)現象や、中空糸同志の接触による透析液側の透析有効膜面積の減少などの影響によって、透析膜性能を十分に発揮できない。
この対策として、各メーカーでは、1 中空糸の交差およびウエーブ化、2
中空糸の間にスペーサーヤーン(細い糸)を挿入する、3 中空糸にフィンを付けるなど種々の工夫を行い透析効率の向上を図っている。
| 生体適合性 |
生体にとって、ダイアライザーおよび血液回路などの人工材料は異物であり、特に透析膜と血液との接触によって、白血球、血小板および補体が活性化され種々の生体反応を引起こす。
| 抗血栓性 |
ダイアライザーの残血は、ダイアライザーの形状および患者血液の凝固能や粘稠度、抗凝固剤の量、膜の特性、血液の流動状態、血液流量などの因子に影響される。
ダイアライザーの形状としては、血液ポート部の形状ならびにポートの外周部まで中空糸が均等に分散されていない構造の物は残血しやすい。
| ハイフラックスメンブレンダイアライザー |
β2-MGなどの低分子量蛋白物質の除去を目的としたダイアライザー。
透析膜のポア半径が40〜100Åで、透水性が高く蛋白が漏出する。除水制御機能付の透析装置でしか使用できず、逆濾過、逆拡散によるエンドトキシン様物質の混入を防止するため透析液の清浄化が不可欠である。
| ダイアライザーの選択条件 |
より良いダイアライザーの選択の条件として以下の項目が上げられる。
| ダイアライザーの保管と管理 |
ダイアライザーは、常温、常湿の環境下で保存し直射日光や水濡れを避ける。
特にウェットタイプでは、充填液の凍結により透析膜が破損し血液漏れの原因となるので、5゜C以下の環境には保存してはならない。
| おわりに |
長期透析患者の合併症は、複合因子によるものが多く原因を特定できず対策に苦慮している。この合併症対策には、「チリも積れば山となる」諺のごとく、日々の透析治療で顕在化していない問題の改善を含めた透析治療の積み重ねが重要である。
これからの透析治療は、低分子量物質から低分子量蛋白物質の除去性能が高く、生体適合性に優れたダイアライザーの選択と、よりピュアーで至適な組成の透析液の使用が望まれるが、経済的要素も考慮しつつ、よりトータル的なアプローチが必要になっている。